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中小企業に対しても「パワハラ防止法」が義務化!今とるべき3つの対応とは

中小企業に対しても「パワハラ防止法」が義務化!今とるべき3つの対応とは


記事作成日:2022/12/26

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令和元年5月に改正労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)が成立しました。
また、今年令和4年4月からは中小企業に対してもパワーハラスメントの防衛措置の実施が義務化されました。(大企業に対しては令和2年6月より義務化)

この記事では、中小企業のパワハラ防止法施行に対してとるべき対応3つのことを、現役の社会保険労務士が解説致します。

パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)とは?

令和元年5月29日に、改正労働施策総合推進法(以下、パワハラ防止法)、通称パワハラ防止法が成立しました。

この法律改正により、パワーハラスメントの防止措置の実施が、事業主の義務となりました。

このパワハラ防止法の施行日は令和2年6月1日とされていますが、中小企業に関しては、令和4年4月1日となっており、これまでの間、中小企業はパワーハラスメントの防止措置の実施は義務ではなく、努力義務とされていました。

パワハラ防止法では事業主が雇用管理上講じるべき措置について、実施が「義務」付けられました。

雇用管理上講じるべき措置についての「4項目

厚生労働省より職場においてパワハラを防止するために、事業主に対して次の「4項目」の実施義務が明示されました。

① 社内方針の明確化とその周知・啓発
② パワハラに関する相談を適切に対処する体制整備
③ パワハラ事案への迅速かつ適切な対応
④ ①~③までの措置と併せて講ずべき措置


以上4つとなっています。
ここから各項目について解説をしていきます。

1、社内方針の明確化とその周知・啓発

 職場におけるパワハラの内容や行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓蒙すること
 行為者について、厳正に対処する旨の方針や対処の内容を就業規則等の文書に規定し、労働者に周知・啓蒙すること


社内方針の明確化とその周知啓発のポイントですが、この「社内の方針」とは、パワーハラスメントを行ってはならない旨の方針のことです。
その方針を明確化して、労働者に周知啓発しなければなりません。

また、「対処の内容」を文書に規定することとは、ハラスメントに該当する言動をした場合に、具体的に、どのような対処がされるのかをルールとして明確化し、労働者に認識してもらうことによって、ハラスメントの防止を図ることを目的としています。

具体的なハラスメントに該当する言動と、処分の内容を、直接対応させた懲戒規定を定めることのほか、どのようなハラスメントの言動が、どのような処分に相当するのかについて、判断要素を明らかにすることが必要で、具体的には「パワーハラスメント防止規程」などの作成が考えられます。

2、パワハラに関する相談を適切に対処する体制設備

相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること。
相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対処できるようにすること。
職場における尾粟原の発生のおそれがある場合や、パワハラに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応する事こと

適切に対処する体制整備のポイントですが、「窓口をあらかじめ定める」とは、窓口を形式的に設けるだけでは足りず、実質的な対応が、可能な窓口が設けられなければなりません。

トラスト社会保険労務士法人では、実質的な対応が可能な窓口の設置及び、体制設備支援を行っております。

3、パワハラ事案への迅速かつ適切な対応

 事実関係を迅速かつ正確に把握すること
 速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行うこと
 行為者に対する措置を適正に行うこと
 再発防止に向けた措置を講ずること


パワハラ事案への迅速かつ適切な対応のポイントですが、パワハラ事案が生じてから、誰がどのように対応するのか検討するのでは、対応を遅らせることになります。
迅速かつ適切に対応するために、対応の手順などをあらかじめ明確に定めておく必要があります。

事実確認は、被害の継続、拡大を防ぐためにも、相談があったら迅速に開始し、事実確認にあたっては、当事者の言い分などを十分に聞きましょう。
ここで、事実確認が完了していなくても、当事者の状況や事案の性質に応じて、被害の拡大を防ぐためにも、被害者の立場を考慮し、臨機応変に対応しなければなりません。

ハラスメントがあったのか、又はハラスメントに該当するのか否か、の認定に時間を割くのではなく、問題となっている言動が直ちに中止され、良好な就業環境を回復することが、最も優先される必要があることは言うまでもありません。

そして、行為者に対しては懲戒規定に沿った処分を行うだけでなく、行為者の言動がなぜハラスメントに該当し、どのような問題があるのかを、真に理解させることが大切になります。

4、パワハラ事案への迅速かつ適切な対応

 相談者、行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること
 相談したこと等を理由として不利益な取り扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること


職場におけるハラスメントの事案についての個人情報は、特に個人のプライバシー保護に関連する事項ですから、事業主は、その保護のために必要な措置を講ずるとともに、その旨を労働者に周知し、労働者が安心して相談できるようにする必要があります。

以上4つが、パワハラ防止法により「義務」付けられている4項目になります。
これらの項目を踏まえた社内の体制構築とパワハラ防止法への対応が今後必要になってきます。

下記記事では、そもそもパワハラとは何なのか?について解説をしております。
パワハラとは?意外と知られていないパワハラの「定義」について解説をします。

会社がやるべき3つのこと

それではここから、本日のお題である「会社がやるべき3つのこと」についてお話をしていきます。

① 事業主によるパワハラへの対応の明確化
② 職場の実態把握
③ 管理職のパワハラへの意識に対する現状の把握


上記3つが「会社がやるべき3つのこと」になります。
順番に解説を致します。

1、事業主によるパワハラへの対応の明確化

 事業主(トップ)からのメッセージ
・事業主による「パワハラは許さない」「パワハラを職場からなくす」という決意を明確にする
 パワハラ防止規定・ガイドライン等の作成
・事業主による決意をパワハラ防止規定やガイドライン等に明文化し周知させる
 相談窓口の設置
・問題が生じた場合にすぐに対応できるように相談窓口を設置し、その存在を周知させる


まず1つ目の事業主によるパワハラへの対応の明確化ですが、まずは事業主からのメッセージです。
トップによるパワハラは許さない、パワハラを職場からなくすと言ったトップの本気度を伝える必要があります。
そして、その決意をパワハラ防止規程やガイドライン等に明文化し周知させていきます。

また、あわせて相談窓口の設置を行い、その存在を周知させます。
相談窓口についてはほかのセクハラやマタハラなどの窓口と一体的に活用するのもよいかと思います。
また相談窓口の利用ですが、業務に支障が出ますので、原則は就業時間外とし、緊急の場合は就業時間でも対応としておいた方が実務的にはよいかと思います。

2、職場の実態把握

 アンケート調査の実施
・質問はなるべく正直に答えやすいように「イエス・ノー」で答えられる簡潔なものにする。
・プライバシーの保護に配慮する


潜在的な被害の実態が明らかになる
コミュニケーションギャップの実態の把握

職場の実態把握により「対策」を考える。

2つ目として、職場の実態把握です。
まずは、アンケート調査の実施を行うことです。
こちらはアンケートの実施を行うことにより、今の職場の実態の把握を行うことが出来ます。

パワハラの感覚は人によって違います。
まずは、従業員が実際にどのように感じているか思っているか、それを知ることから始まります。

アンケートについては、正直に答えてもらうように配慮が必要になります。
ですので、基本は匿名で良いかと思います。
ただ、実名でも構わない旨を入れ、実名での回答者にはすぐに対応しなければなりません。
実名を書くぐらいですから、今の状況を訴えたくてしょうがない状態と思います。

アンケート調査の実施で今までそのような機会がなかったので言うに言えなかったことなど潜在的な被害が明らかになります。

また、周りは何とも思っていなかったことが、本人はとても悩んでいたなど、今の職場の見えなかった部分が見えてくることにより、コミュニケーションギャップがわかってきます。そして、その見えなかった部分が見えることによりこれからの対策を考えることができるのです。

3、管理職のパワハラへの意識に対する現状の把握

 管理職へのチェックリストの実施
パワハラの多くは無自覚で行われています。どの程度無自覚なのか把握する(現状把握)


 管理職向けの研修を行う
管理職はパワハラの加害者になりやすいという自覚を促す。
部下とのコミュニケーションエラーを防ぐ。(「指導」と「パワハラ」の違いの確認)


3つ目、管理職のパワハラへの意識に対する現状の把握です。
まずは管理職へのチェックリストの実施を行う必要があります。
このチェックリストは自分の日ごろの行動や考え方について答えるものになります。パワハラの多くは無自覚で行われていることが多いものです。
ですので、管理職へチェックリストの実施を行うことにより、パワハラ行動に対していくつか当てはまることがあるでしょう。

自分がどの程度無自覚でパワハラ行動を行ってしまっていることに気づくことが出来ます。
また、会社としても、この管理職は自覚がないので注意しなくてはならないと注意人物を把握することも出来ます。

パワハラの定義でも解説をしておりますが、パワハラの多くは職場の優越的な関係からということで上司から部下への行為です。
ですので、管理職向けの研修を行っていきます。
管理職に向けたパワハラ研修を行うことにより、自分は大丈夫だろうという安易な思い込みがパワハラにつながっていくことを自覚させることが大切です。
この研修では、管理職である自分は加害者になりやすいことへの自覚を促すこと、自分は大丈夫だろうという安易な思い込みによる部下とのコミュニケーションエラーに気づけていないことなどを伝えます。
また、指導とパワハラの違いとして、あくまでも業務上必要である注意指導は問題ないと教え、パワハラを意識しすぎて指導注意できないなど、問題社員が放置され、組織の規律が維持できなくなるのは本末転倒であると明確に伝えることが大切です。
パワハラは決して部下を甘やかせろと言っているのではなく、優位性を背景に業務上必要な範囲を超えた行為が問題なのだときちんと分からせる必要があります。

まとめ

近年ではパワハラだけではなく、モラハラやセクハラなども厳しい社会環境になってきております。
「人を雇うことがリスク」と考える経営者も少なくはないと思います。しかし、会社は人が居て成り立つもであり、従業員なくしてはどこの会社も上手に運営していくのはなかなか難しいことでしょう。
パワハラやセクハラと言われない社内の雰囲気や制度作りが今後よりいっそう大切になってきます。

弊社、トラスト社会保険労務士法人では社内のパワハラ防止法に対する体制構築の支援から、就業規則や社内規則までトータルでサポートをしております。

パワハラについてや、社内の規則作成等お気軽にお問い合わせください。

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