みなし残業(固定残業代)制度
記事作成日:2024/1/22
みなし残業(固定残業代)制度は、実際の労働時間に関わらず毎月一定の残業や休日労働などをしているとみなし、固定の残業代を支払う制度のことです。
本来、みなし残業制度は事業主にも労働者にもメリットがある制度ですが、どれだけ働いても同じ残業代しかでないなどの間違った理解をしていることが多々見受けられます。
今回は、みなし残業制度について、仕組み、導入方法、注意点などをわかりやすく解説していきます。
みなし残業制度とは、法定時間外労働などの割増賃金を、あらかじめ固定分として支払う制度のことです。
この固定分の残業代等は、定額の手当として、または基本給の一部として支給します。
例えば、みなし残業制度により1か月の時間外労働が20時間とみなしていた場合、実際の時間外労働が10時間だったとしても20時間の残業代を支払わなければならないのです。
みなし残業制度を導入するためには、以下の手順を踏む必要があります。
みなし残業制度を導入するために、まずは実態を把握して、みなし残業をどのくらいの時間に設定するのかを設定する必要があります。
また、すべての労働者に対して設定するのか、部署によって設定するのか実態から対象者を決めていきます。
みなし残業制度の導入は、労働者にとって給与の変更になるため、とても大事なことです。
そのため、口頭での労働者への説明だけでなく、労働者の同意をとっておいた方がよいでしょう。
特に、みなし残業を基本給の一部として支給する場合は、不利益変更になる可能性があるため、労働者の同意が必要です。
みなし残業制度を導入することになった場合には、就業規則への記載が必要になります。
みなし残業代を基本給の一部として支給する場合には、割増賃金部分とそれ以外の賃金部分とを明確に区別しなければなりません。
また、定額の手当等でみなし残業代を支給する場合には、残業手当の定額払いであることを明記することが必要です。
みなし残業制度を導入することが決まったら、労働者への通知が必要です。
通知だけでも問題はありませんが、トラブルを避けるためにも労働者それぞれと個別の労働契約書などにより、具体的な時間数や金額を記載して締結するとよいでしょう。
みなし残業制度を導入するのには、以下の点について注意する必要があります。
みなし残業制度は、法的に明文されている制度ではありません。
ただし、みなし残業制度により支払う一定額が労働基準法第37条による割増賃金よりも少ない場合は、労働基準法違反になりますので注意が必要です。
すなわち、みなし残業制度により支払う一定額以上よりも多く時間外労働をした場合には、不足時間分の残業代をみなし残業代に含めて支払う必要があります。
みなし残業代は、一定時間残業をしたとみなしてあらかじめ支払うものです。
そのため、実際の残業代がみなし残業代よりも少なくても、みなし残業と設定した金額を支払わなければなりません。
みなし残業代の金額が、時給換算で各都道府県ごとの最低賃金を上回り、さらに時間外労働の割増賃金分を上乗せした金額以上でなければ違法になります。
法定時間外労働を行った場合は、通常賃金の25%以上の割増賃金を支払わなければならないと労働基準法で定められています。
みなし残業制度によるみなし残業代も同様に、通常賃金の25%以上の割増賃金率にて計算しなければなりません。
みなし残業制度を導入することにより、事業主にとっては残業代の計算が不要になることや、人件費を把握しやすいなどのメリットがあります。
一方、みなし残業代よりも実際の時間外労働時間が少なければ、人件費がかさむことになります。
また、みなし残業制度は、みなし残業代以上の時間外労働をしても不足分の残業代を出さないなどのトラブルになるケースが多いのが現状です。
みなし残業制度について詳しく知りたい場合は、是非一度当事務所にご相談ください。