割増賃金率50%の引き上げに向けて求められる取組み
記事作成日:2022/12/26
2023年4月より、すべての企業において、1ヶ月60時間を超える法定時間外労働に対して50%以上の割増賃金率による割増賃金の支払いが求められます。
大企業ではすでに適用されている制度ですが、今後は中小企業にもその適用が拡大されます。以下では、時間外労働が多い企業において、施行までに求められる対応を確認します。
2023年4月からは、1ヶ月60 時間を超えた法定時間外労働に対する割増賃金率が50%以上に引き上げられます。これはあくまでも月60 時を超えた部分に対する割増賃金率の引き上げですが、時間単価が1,500 円の場合、割増賃金率が50%に変わることでそのインパクトは小さくありません。
さらに、月60 時間を超える法定時間外労働が深夜労働に及んだときは、深夜労働に対する割増賃金の支払いも必要となることから、割増賃金率は現状の50%(深夜労働25%+時間外労働25%)から75%(深夜労働25%+時間外労働50%)以上となります。
長時間労働の防止および人件費の抑制という観点からも、企業にはできるだけ時間外労働を削減することが求められます。時間外労働削減に向けた取組みとして、以下のようなポイントが挙げられます。
□付き合い残業でないか
□残業の判断が従業員任せになっていないか(その日のうちに行うべき業務なのかを上が確認し残業指示を出しているか)
□人員体制の見直しは可能か
□機器等の導入・見直しにより業務のやり方を変えたり、生産性を向上したりすることができるか
□社内の業務フローに問題がないか(営業が無理な契約で受注した結果、後工程の業務を行う部署にしわ寄せがいっていないか等)
割増賃金率の引き上げは、人件費の大幅な増加につながる可能性があります。そのため、過去1年間の時間外労働の時間数を引き合いに、同条件のままであれば、人件費がどのくらい増加するのかを試算しておくとよいでしょう。
また、人件費の内容を経営会議のような場面で共有し、現場の管理者にも人件費への影響について知ってもらうことで、時間外労働の削減の必要性を共通認識することができるでしょう。
「時間外労働・休日労働に関する協定届」(36協定)では、特別条項を設ける場合、限度時間を超えた労働に係る割増賃金率を記載する欄があります。
しかし、月60 時間を超えた割増賃金率については記載する必要がないため、協定期間が割増賃金率の変更となる2023 年4月をまたぐ場合も、届出をし直す必要はありません。
時間外労働の削減の前提として、企業は労働時間を適正に把握することが必要です。
適正な労働時間を記録するよう社内教育を行ったり、労働時間の記録とパソコンの使用記録などの労働実態との乖離がないかを点検したりするなどの取組みも行いましょう。