特別な健康診断が必要な労働者とは?|定期健康診断との違いを解説
記事作成日:2022/12/26
事業者は特定の業務に従事する労働者に定期健康診断以外の健康診断を実施する必要があります。
この記事では主に特定業務従事者の健康診断や特殊健康診断、歯科医師による健康診断について解説します。
事業所は労働安全法第66条に基づいて[A1] 、労働者に対して医師による健康診断の実施が義務付けられています。「一般健康診断」に分類される常時使用する労働者への雇入時の健康診断と定期健康診断はよく知られているでしょう。
定期健康診断は1年以内ごとに1回ですが、ほかに特別な業務に従事する労働者には、定期健康診断以外の健康診断が必要です。健康診断は大きく分けて一般健康診断とそれ以外に分類されます。どのような健康診断があるのか紹介しましょう。
一般健康診断に分類されるものに5つありますので紹介します。( )内は対象となる労働者です。
・雇入時の健康診断(常時使用する労働者)
・定期健康診断(常時使用する労働者)
・特定業務従事者の健康診断(労働安全衛生規則第13条第1項第2号に書かれる業務に常時従事する労働者)
・海外派遣労働者の健康診断(海外に6ヶ月以上派遣する労働者)
・給食従業員の検便(事業に附属する食堂または炊事場における給食の業務に従事する労働者)
一般健康診断以外に有害な業務に常時従事する労働者などに対して、以下の3つの健康診断があります。
・特殊健康診断(8種類の有害な業務に従事する労働者)
・じん肺検診(じん肺法第3条、第7~10条に規定された労働者)
・歯科医師による検診(歯またはその支持組織に有害な物質を発散する場所で業務に従事する労働者)
すべての事業者は雇入時健康診断や1年以内ごとに1回の定期健康診断の実施は必須です。さらに、健康を害する可能性のある労働者に対しては特別な健康診断を行う必要があります。
そこで、特に大切と考えられる特定業務従事者の健康診断・特殊健康診断・歯科医師による検診の3つについて見ていきましょう。
労働安全衛生規則に掲げる業務に常時従事する労働者に対して、実施することが義務付けられている特定業務従事者の健康診断です。
具体的な業務として、多量の高熱物体を取扱う業務や著しく暑熱な場所における業務、多量の低温物体を取扱う業務および著しく寒冷な場所における業務、ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務など、身体に負担がかかる業務が挙げられます。ほかにも夜勤のある施設など、深夜業を含む業務も該当しますので注意が必要です。
健康診断の実施時期は、これらに該当する業務へ労働者を配置替えする際と6ヶ月以内ごとに1回となっています。検査項目は、一般健康診断に分類されていますので定期健康診断と同じです。
特殊健康診断は、有害な物質などを扱う業務に常時従事する労働者に対して、一般健康診断とは異なる項目の健康診断の実施が義務付けられています。具体的にどのような業務かを紹介します。
① 有機溶剤業務
② 鉛業務
③ 四アルキル鉛業務
④ 特定化学物質製造または取扱い業務
⑤ 高圧室内業務または潜水業務
⑥ 放射線業務のうち管理区域に立ち入る業務
⑦ 除染等業務
⑧ 石綿の粉じんを発散する場所での石綿業務
実施時期は、原則として、雇入れ時、配置替えの際と6ヶ月以内ごとに1 回の実施となっています。
また、上記のうち、一定の特定化学物質業務や石綿業務などについては、それらの業務に従事しなくなった場合でも特殊健康診断の実施が必要です。
歯科医師による健康診断は、歯またはその支持組織に有害な物質のガス、蒸気または粉じんを発散する場所での業務に常時従事する労働者に対して実施されます。たとえば有害な物質として塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、フッ化水素、黄りんなどが挙げられます。
雇入れ時、配置替えの際と6ヶ月以内ごとに1回の健康診断の実施が必要です。歯科医師による健康診断を実施した場合、常時使用する労働者の数が50 人以上の事業場に実施結果の報告が義務付けられていました。しかし2022 年10 月より、事業場規模にかかわらず、すべての事業場に報告が義務付けられました。
また、歯科健康診断結果の報告書様式が新たに定められているため、報告する際には新様式を使用しましょう。
派遣労働者は派遣元で雇用されていますが、実際に業務を行う場は派遣先です。
そのため、派遣元で派遣労働者の定期健康診断や特定業務従事者の健康診断を行います。
一方、特殊健康診断や歯科医師による健康診断は派遣先での実施が義務付けられています。健康診断の実施がもれないようにしましょう。
業種や業態の違いによって、従事する労働者への特別な健康診断が必要となることを見てきました。
労働安全法で規定されており、事業者に対する義務となっているため、漏れがないよう気を付ける必要があります。
法律改正もありますので、疑問などがあればトラスト社会保険労務士法人への相談をおすすめします。