傷病手当金について
記事作成日:2023/4/17
会社員などの健康保険の被保険者が、業務外の病気やケガが原因で仕事を休み、その間の給与が支払われない場合に、健康保険から「傷病手当金」という給付金を受給できる可能性があります。
傷病手当金は、病気やケガによる休業中に被保険者とその家族の生活の保障を目的とした健康保険の制度です。
今回は、傷病手当金について、詳しく解説していきます。
傷病手当金は、健康保険の被保険者が支給開始日から1年6か月を限度に受給できます。
任意継続被保険者の方は、傷病手当金を受給できません。
また、国民健康保険の傷病手当金は任意給付のため、基本的には受給できません。
傷病手当金の受給要件は、以下になります。
業務内、通勤途上のケガなどについては、労災保険の範囲になります。
労務不能の判定は、療養担当者(医師など)の意見により判断されます。
病気やケガの療養のために、連続して3日間仕事を休んだ期間を待機期間といいます。
待機期間には、有給休暇や土日祝日などの公休日も含みます。
例えば、連続した5日間の勤怠が休暇、休暇、出勤、休暇、休暇の場合、待機期間が成立していないため、傷病手当金を受給できません。
給与の支払いがあっても給与日額が傷病手当金の日額より少ないときは、その差額が支給されます。
傷病手当金の1日当たりの受給額は、以下の計算式で算出されます。
支給開始日の以前12か月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×2/3
健康保険の被保険者期間が12か月に満たないため、支給開始日の以前12か月間の各標準報酬月額が算出できない場合は、以下いずれか低い額を使用して計算します。
①当該被保険者の支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額
②当該被保険者の属する保険者の全被保険者の標準報酬月額の平均額
傷病手当金は、受給要件を満たしていたとしても、被保険者の状況により調整されることがあります。 以下のケースに当てはまる場合は、傷病手当金の支給額の全部または一部が調整されます。
仕事を休んだ期間において、給与や手当が支給されている場合は、傷病手当金は支給されません。
ただし、支給された給与や手当の日額が、傷病手当金の日額より少ない場合は、その差額が支給されます。
傷病手当金と同じ傷病などにより、障害厚生年金または障害手当金が受給できる場合には、傷病手当金は支給されません。
ただし、障害厚生年金受給額の360分の1の金額が、傷病手当金の日額より少ない場合は、その差額が支給されます。
また、傷病手当金の支給額の合計が障害手当金の額に達するまでの間は、傷病手当金は支給されません。
退職後に老齢退職年金が受給できる場合には、傷病手当金は支給されません。
ただし、老齢退職年金受給額の360分の1の金額が、傷病手当金の日額より少ない場合は、その差額が支給されます。
この場合の老齢退職年金とは、「国民年金法、厚生年金保険法その他各種共済組合法に基づく老齢または退職を支給事由とする年金給付であって政令で定めるもの」のことです。
労災保険から休業補償給付を受給している場合に、業務外の病気やケガで労務不能になっても傷病手当金は支給されません。
ただし、休業補償給付の日額が、傷病手当金の日額より少ない場合は、その差額が支給されます。
過去に労災保険から休業補償給付を受給していて、その休業補償給付と同じ病気やけがで労務不能になった場合は、傷病手当金は支給されません。
出産手当金を受給している場合には、傷病手当金は支給されません。
ただし、出産手当金の受給額が、傷病手当金の受給額より少ない場合は、その差額が支給されます。
このように、傷病手当金とは、健康保険の被保険者が業務外の病気やケガが原因で労務不能となり、その間の給与が支払われない場合に、健康保険から受給できる給付金です。
傷病手当金は、業務外の病気やケガで休業せざるを得なくなった被保険者とその家族に対し、生活を保障していくことを目的としています。