年次有給休暇について
記事作成日:2023/5/29
年次有給休暇とは、労働基準法第39条に定められた賃金が減額されずに取得できる休暇のことです。
年次有給休暇の目的は、心身の疲労を回復することと、ゆとりある生活を保障することです。
また、使用者は、一定期間継続して勤務した労働者に対して年次有給休暇を与えなければならないと労働基準法に定められています。
今回は、年次有給休暇を取得できる要件や、取得できる日数などについて詳しく解説していきます。
以下の2つの要件を両方とも満たした場合、年次有給休暇が付与されます。
(1)雇い入れの日から6か月以上継続して雇用されていること
(2)全労働日の8割以上を出勤していること
年次有給休暇は、取得要件を満たした一般の労働者だけでなく、パートタイム労働者などの所定労働日数が少ない労働者についても付与されます。
ただし、一般の労働者と比べて、年次有給休暇の付与日数は少なくなります。
この場合の一般の労働者とは、週の所定労働時間が30時間以上で所定労働日数が週5日以上の労働者、または1年間の所定労働日数が217日以上の労働者のことです。
また、所定労働日数が少ない労働者とは、週の所定労働時間が30時間未満で週の所定労働日数が4日以下の労働者、または年間の所定労働日数が48日から216日までの労働者のことです。
(1)一般の労働者の年次有給休暇付与日数
一般の労働者の年次有給休暇付与日数は、以下の通りです。
雇入れの日からの勤続期間 | 年次有給休暇の付与日数 |
6か月 | 10日 |
1年6か月 | 11日 |
2年6か月 | 12日 |
3年6か月 | 14日 |
4年6か月 | 16日 |
5年6か月 | 18日 |
6年6か月以上 | 20日 |
週所定労働日数 | 雇入れ日から起算した継続勤務期間 | 1年間の所定労働日数 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年以上 | ||
4日 | 169日~216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
3日 | 121日~168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
2日 | 73日~120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
1日 | 48日~72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
2019年4月の働き方改革関連法案の施行により労働基準法が改正されて、使用者は法定の年次有給休暇が10日以上の全ての労働者に対して、毎年5日間の年次有給休暇を確実に取得させることが義務化されました。
取得義務化は、パートタイム労働者などの週所定労働日数が少ない労働者であっても、年10日以上の年次有給休暇が付与されていれば対象です。
毎年5日間の年次有給休暇の取得とは、「使用者による時季指定」「労働者自らの請求による取得」「計画的付与制度による取得」のいずれかの方法により年5日以上の年次有給休暇を取得させるものです。
これらの方法により労働者が年次有給休暇を5日取得した時点で、使用者は時季指定する必要がなくなり、また時季指定することもできません。
(1)使用者による時季指定
使用者による時季指定とは、使用者が年次有給休暇を付与した日から1年以内に5日について、取得時季を指定して労働者ごとに年次有給休暇を取得させなければならない制度です。
ただし、5日以上年次有給休暇を取得済みの労働者に対しては、使用者による時季指定をする必要はありません。
また、時季指定は、労働者の意見を聴取して、できる限り労働者の希望通りの取得時季になるように努める必要があります。
(2)年次有給休暇の計画的付与制度
年次有給休暇の計画的付与制度とは、労使協定を締結することにより、年次有給休暇のうち5日を超える分について、休暇取得日を計画的に割り振れる制度です。
例えば、企業や事業所全体の休業による一斉付与や、班やグループ別に交替制で付与や、年次有給休暇付与計画表に基づいて個人別に付与するなどの活用ができます。
このように、年次有給休暇とは、心身の疲労を回復することなどを目的とした労働基準法に定められた制度です。
また、年次有給休暇は、有給で休暇が取得できる労働者の権利ですので、基本的には拒否することはできません。
ただし、労働者が年次有給休暇を請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合に限り、使用者は有給休暇を他の時季に与えられます。