フレックスタイム制における時間外労働について
記事作成日:2024/1/31
フレックスタイム制とは、一定の期間に定められた総労働時間の範囲内で労働者が毎日の始業時刻、終業時刻、労働時間を自分で決められる制度です。
労働者が自分で柔軟な働き方を選択できるため、仕事とプライベートとの調和を図りながら働くことができるのです。
フレックスタイム制は、始業時刻、終業時刻、労働時間を自由に選択できるため、通常の労働とは時間外労働の考え方が異なります。
今回は、フレックスタイム制の時間外労働をどのように算出するのかについて、わかりやすく解説していきます。
フレックスタイム制は、一定の期間においてあらかじめ定められた総労働時間の範囲内であれば、労働者が始業・終業時刻、労働時間を自分で決められる制度です。
フレックスタイム制を導入するには、以下の要件を満たす必要があります。
(1)就業規則等への規定
(2)労使協定で以下の事項を定めること
・対象となる労働者の範囲
・清算期間
・清算期間における総労働時間
・標準となる1⽇の労働時間
・コアタイム(設定した場合)
・フレキシブルタイム(設定した場合)
(3)1か月を越える清算期間を設定する場合には、所轄労働基準監督署長に労使協定を届出すること
フレックスタイム制では、労使協定に定めなければいけない項目である清算期間や、場合によってはコアタイムとフレキシブルタイムを設定して運用していきます。
本頁では、フレックスタイム制を運用するのに必要な仕組みについて、解説していきます。
清算期間とは、フレックスタイム制の中で労働者が労働しなければならない総労働時間を定める期間のことで、上限が3か月です。
また、清算期間を定めるには、期間の長さだけでなく、清算期間の起算日も定めなければなりません。
清算期間における総労働時間とは、労働者が清算期間の中で労働しなければならない所定労働時間のことです。
フレックスタイム制では、清算期間を単位として所定労働時間を設定します。
また、清算期間における総労働時間は、清算期間における法定労働時間の総枠の範囲内で設定しなければなりません。
標準となる1⽇の労働時間は、以下の計算式で算出されます。
標準となる1⽇の労働時間=清算期間における総労働時間÷清算期間における所定労働日数
フレックスタイム制の対象者が有給休暇を取得した場合、標準となる1⽇の労働時間を労働したものとして給与計算します。
コアタイムとは、フレックスタイム制の1日の中で労働者が1日のうちで必ず労働しなければならない時間のことです。
コアタイムは設定しなくても問題ありませんが、設定する場合には開始時刻と終了時刻を労使協定で定めなければなりません。
フレキシブルタイムとは、フレックスタイム制の中で労働者が自分で選択できる労働時間のことです。
フレキシブルタイムもコアタイム同様に設定しなくても問題ありませんが、設定する場合には開始時刻と終了時刻を労使協定で定めなければなりません。
通常の勤務制度では1日8時間かつ1週40時間の法定労働時間を超えて労働した場合に時間外労働になり、通常の賃金の25%以上の割増賃金を支払う必要があります。
一方、フレックスタイム制は労働時間を自分で決められる制度のため、1日8時間かつ1週40時間を越えて労働した場合でもすぐに時間外労働になるわけではありません。
フレックスタイム制では、清算期間内での実際の労働時間が、清算期間における法定労働時間の総枠を超えた場合に時間外労働になります。
清算期間における法定労働時間の総枠は、以下の計算式で算出されます。
清算期間における法定労働時間の総枠=1週間の法定労働時間(40時間(特例事業場の場合は44時間))×清算期間の暦日数÷7日
月単位を清算期間とした場合の法定労働時間の総枠は、計算式で算出された以下の表のとおりになります。
1か月単位 | 2か月単位 | 3か月単位 | |||
---|---|---|---|---|---|
清算期間の暦日数 | 法定労働時間の総枠 | 清算期間の暦日数 | 法定労働時間の総枠 | 清算期間の暦日数 | 法定労働時間の総枠 |
31日 | 177.1時間 | 62日 | 354.2時間 | 92日 | 525.7時間 |
30日 | 177.4時間 | 61日 | 348.5時間 | 91日 | 520時間 |
29日 | 165.7時間 | 60日 | 342.8時間 | 90日 | 514.2時間 |
28日 | 160時間 | 59日 | 337.1時間 | 89日 | 508.5時間 |
このように、フレックスタイム制の時間外労働は、通常の勤務制度の時間外労働とは異なります。
清算期間内での実際の労働時間が、清算期間における法定労働時間の総枠を超えて労働した場合に時間外労働になるのです。
フレックスタイム制について詳しく知りたい場合は、是非一度当事務所にご相談ください。