変形労働時間制における時間外労働について
記事作成日:2024/2/20
変形労働時間制とは業務の繁忙期や閑散期に応じて労働時間が調整できる制度で、「1年単位の変形労働時間制」、「1か月単位の変形労働時間制」、「1週間単位の非定型的変形労働時間制」の3種類があります。
また、「フレックスタイム制」も労働時間が調整できる制度という意味で、変形労働時間制に含めて考えられるケースもあります。
変形労働時間制の特徴は繁忙期に労働時間が多くなり、閑散期には労働時間が少なくなるため、時間外労働の考え方が通常の勤務制度とは異なるのです。
今回は、1年単位の変形労働時間制、1か月単位の変形労働時間制、1週間単位の非定型的変形労働時間制の時間外労働をどのように算出するのかについて、解説していきます。
労働基準法では、1日8時間かつ1週40時間の法定労働時間を越えて労働してはいけないと定められています。
法定労働時間を越えて労働者が労働した場合は、時間外労働として通常の賃金に加えて割増率25%以上の割増賃金を支払わなければならないのです。
また、時間外労働が60時間を越えた場合には、越えた分に対して割増率50%以上の割増賃金を支払わなければなりません。
通常の勤務制度での法定労働時間を越えた時間外労働に対する割増賃金は、以下の計算式で算出されます。
1時間あたりの基礎賃金 × 割増率 × 法定時間外労働時間
1年単位の変形労働時間制の場合は、以下の労働時間については時間外労働となり、割増賃金を支払わなければなりません。
・労使協定に定められた労働日ごとの労働時間が1日8時間を越える場合には、その時間を越えて労働した時間が時間外労働になります。
・労使協定に定められた労働日ごとの労働時間が1日8時間以下の場合には、8時間を越えて労働した時間が時間外労働です。
・労使協定に定められた労働日ごとの労働時間が1週40時間を越える場合には、その時間を越えて労働した時間が時間外労働になります。(2-(1)で法定時間外労働となる時間を除く)
・労使協定に定められた労働日ごとの労働時間が1週40時間以下の場合には、40時間を越えて労働した時間が時間外労働です。(2-(1)で法定時間外労働となる時間を除く)
・対象期間の法定労働時間総枠を越えて労働した時間が、時間外労働になります。(2-(1)または2-(2)で法定時間外労働となる時間を除く)
対象期間の法定労働時間総枠は、以下の計算式で算出されます。
40時間×対象期間の暦日数÷7
1か月単位の変形労働時間制の場合は、就業規則や労使協定などで定めた1日、1週の労働時間や労働時間の総枠を超えた労働時間については時間外労働となり、割増賃金を支払わなければなりません。
・労使協定や就業規則などに定められた労働時間が1日8時間を越える場合には、その時間を越えて労働した時間が時間外労働になります。
・労使協定や就業規則などに定められた労働時間が1日8時間以下の場合には、8時間を越えて労働した時間が時間外労働です。
・労使協定や就業規則などに定められた労働時間が1週40時間( 特例措置対象事業場については44時間 )を越える場合には、その時間を越えて労働した時間が時間外労働になります。(3-(1)で法定時間外労働となる時間を除く)
・労使協定や就業規則などに定められた労働時間が1週40時間( 特例措置対象事業場については44時間 )以下の場合には、40時間(44時間 )を越えて労働した時間が時間外労働です。(3-(1)で法定時間外労働となる時間を除く)
・対象期間の法定労働時間総枠(40時間( 特例措置対象事業場については44時間 )×対象期間の歴日数÷7)を越えて労働した時間が、時間外労働になります。(3-(1)または3-(2)で法定時間外労働となる時間を除く)
1週間単位の非定型的変形労働時間制の場合、以下の労働時間については時間外労働となり割増賃金を支払わなければなりません。
・労使協定に定められた労働時間が1日8時間を越える場合には、その時間を越えて労働した時間が時間外労働になります。
・労使協定に定められた労働時間が1日8時間以下の場合には、8時間を越えて労働した時間が時間外労働です。
・労使協定に定められた労働時間が1週40時間を越える場合には、その時間を越えて労働した時間が時間外労働になります。(4-(1)で法定時間外労働となる時間を除く)
・労使協定に定められた労働時間が1週40時間以下の場合には、40時間を越えて労働した時間が時間外労働です。(4-(1)で法定時間外労働となる時間を除く)
変形労働時間制の時間外労働は、通常の勤務制度とは異なりますので注意が必要です。
変形労働時間制について詳しく知りたい場合は、是非一度当事務所にご相談ください。