賃金支払い5原則や賃金のデジタル払い
記事作成日:2024/2/29
賃金支払い5原則とは、労働基準法第24条に定められた賃金を支払う場合の以下の原則のことです。
「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。」
このように賃金は、原則通貨で支払わなければなりません。
しかし、労働者の同意を得た場合には、指定された銀行やその他の金融機関へ振込みなどによる支払いができると労働基準法施行規則に定められています。
今や給与の支払いはほとんどが銀行振込で支払われていますが、昨今のキャッシュレス決済の普及などにより給与のデジタル払いも一定のニーズがありました。
そのことを踏まえて2023年4月の労働基準法施行規則の一部改正により、労働者の同意を得た場合には賃金のデジタル払いもできるようになりました。
今回は、賃金支払い5原則と賃金のデジタル払いについて解説していきます。
給与などの賃金は、労働基準法第24条に定められた「賃金支払い5原則」に基づいて支払わなければなりません。
賃金支払い5原則とは、以下の5つの原則です。
・通貨払いの原則
・全額払いの原則
・直接払いの原則
・毎月払いの原則
・一定期日払いの原則
本頁では、賃金支払い5原則とはどういう原則なのかについて、解説していきます。
通貨払いの原則とは、賃金は貨幣や日本銀行券などの通貨で支払わなければならないという原則です。
すなわち、日本円の現金で支払うことが定められていて、小切手や口座への振込みでの支払いは原則できません。
しかし、労働者の同意を得た場合には、指定金融機関へ振込みや賃金のデジタル払いが可能です。
全額払いの原則とは、賃金は控除することなく全額を支払わなければならないという原則です。
賃金の一部を控除することを禁止し、賃金を全額支払うことで、労働者の生活の安定を尊守することが全額払いの原則の目的です。
ただし、賃金からの控除が法令に定められているやものや、労使協定により控除を同意しているものは、例外として賃金の一部を控除することが認められています。
直接払いの原則とは、賃金は直接労働者に必ず支払わなければならないという原則です。
親族や法廷代理人が代わりに受け取りたいといったとしても、第三者に支払うことは禁止されています。
ただし、病気や入院などの事情があって労働者本人が賃金を直接受け取れないケースのみ、家族などの使者に支払うことができます。
中間搾取を防止して、労働者本人に全額支払われることが、直接払いの原則の目的です。
毎月払いの原則とは、賃金は毎月初日から月末までの間に1回以上支払わなくてはならないという原則です。
ただし、臨時に支払われる賃金や、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金については、例外として毎月1回以上払わなくても問題ありません。
賃金を毎月1回以上支払うことで労働者の生活の安定を尊守することが、毎月払いの原則の目的です。
一定期日払いの原則とは、賃金は一定の期日を定めて支払わなければならないという原則です。
例えば、月末締めの翌月25日払いなどの一定の期日を決めて支払わなければならず、毎月第4月曜日や25日から30日の間に支払うなどは一定期日払いにはなりません。
ただし、毎月月末払いは、月ごとに日にちが違う場合がありますが、一定期日払いになります。
また、一定期日が休日にあたる場合は、その日以外に支払うことも認められています。
一定期日払いに支払うことで労働者の生活の安定を尊守することが、一定期日払いの原則の目的です。
2023年4月1日に施行された「労働基準法施行規則の一部を改正する省令案」により、労働者の同意を得た場合は、厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者の口座への賃金支払ができるようになりました。
これにより、給与などの賃金を直接決済アプリや電子マネーなどに送金する、賃金のデジタル払いができるようになったのです。
このように給与計算をする上では、賃金支払い5原則や賃金のデジタル払いを意識しなければなりません。
給与計算でわからないことがありましたら、是非一度当事務所にご相談ください。