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給与計算の端数処理

給与計算の端数処理


記事作成日:2024/3/25

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給与計算をしていく中で、様々なケースで端数が生じます。
この端数は、原則切り捨ててはいけません。
なぜなら、労働基準法第24条では、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を、毎月1回以上、一定期日を定めて支払わなければならない」と定義されているからです。
そのため、端数の切り捨ては、状況によっては労働基準法違反になりますので注意が必要です。
しかし、労働基準法で認められている給与計算の端数処理もあります。

今回は、給与計算の中で、労働時間や賃金の端数処理について解説していきます。

1.労働時間の端数処理

原則1日の労働時間は、1分単位で記録や管理をしなければなりません。
そのため、1日の労働時間を切り捨てることは禁止されていて、1分単位の端数が発生した場合はすべて切り上げる必要があります。
例えば、ある日に残業を2時間14分した従業員がいたとします。
この従業員のこの日の残業時間を、14分切り捨てをして2時間として割増賃金を計算するのは労働基準法違反です。
この会社が15分単位で1日の残業時間を計算しているのなら、1分繰り上げをして2時間15分として割増賃金を計算しなければなりません。

このように、会社などの使用者が、従業員の労働時間を切り捨てることは認められません。
ただし、1か月の時間外労働時間、休日労働時間、深夜労働時間の合計時間について1時間未満の端数がある場合、例外として以下の端数処理方法が認められています。
・30分未満を切り捨て、30分以上60分未満を切り上げ1時間とすること
例えば、1か月の時間外労働が6時間13分、休日労働が8時間44分、深夜労働が8時間32分の場合の端数処理は、1か月の時間外労働は6時間、休日労働は9時間、深夜労働は9時間とすることが認められているのです。

2.賃金の端数処理

1時間当たりの賃金を計算する場合、1円未満の端数が生じるケースがあります。
この場合、1円未満の端数を切り捨てたり、四捨五入をしめ小数第一位を切り捨てることは、違法です。
ただし、例外として労働者が不利になるものではなく、事務の簡易化のためのものであれば、例外として端数処理が認められています。

(1)割増賃金における端数処理

時間外労働時間、休日労働時間、深夜労働時間に対する割増賃金の計算において、端数が発生した場合、以下のケースでは端数処理が認められています。
・1時間あたりの賃金額および割増賃金額に円未満の端数が生じた場合には、50銭未満の端数を切り捨てて、50銭以上1円未満の端数を1円に切り上げること
例えば、時給換算で1,650円の従業員の、1時間当たりの時間外労働の割増賃金の計算式は以下です。

1,650円×1.25=2,062円50銭

この場合の円未満の端数が50銭のため、2,063円に切り上げます。
例えば、時給換算で1,649円の従業員の、1時間当たりの時間外労働の割増賃金の計算式は以下になります。

1,649円×1.25=2,061円25銭

この場合の円未満の端数が25銭のため、2,061円に切り捨てが可能です。
・1か月間あたりの割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合には、50銭未満の端数を切り捨てて、50銭以上1円未満の端数を1円に切り上げること
例えば、時給換算で1,649円の従業員が1か月間合計で9時間の時間外労働を行ったケースでは、割増賃金の計算式は以下になります。

1,649円×1.25=2,061円25銭

2,061円25銭×9時間=18,551円25銭

この場合の円未満の端数が25銭のため、18,551円に切り捨てが可能です。

(2)1か月の賃金支払額における端数処理

1か月の賃金計算における端数処理も、以下のケースが認められています。

・1か月の賃金額(一部の賃金を控除する場合には控除した残額)に100円未満の端数が生じた場合には、50円未満の端数を切り捨てて、50円以上の端数を100円に切り上げて支払うこと
例えば、1か月の賃金額が500,746円の場合、50円未満を切り捨てて、500,700円を支給することが可能です。

・1か月の賃金額に1,000円未満の端数がある場合には、1,000円未満の端数を翌月の賃金支払日に繰り越して支払うこと
例えば、1か月の賃金額が500,746円の場合、1,000円未満の746円を翌月の賃金支払日に繰り越して、500,000円を支給することが可能です。

まとめ

このように、給与計算において労働時間や賃金の端数処理が発生した場合には、基本的には端数を切り捨てることはできません。
ただし、従業員の不利益にならない端数処理については、認められているケースもあります。

給与計算の端数処理について、疑問点がございましたら是非一度当事務所にご相談ください。

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