雇用保険料の給与計算
記事作成日:2024/3/31
雇用保険制度とは、労働者が失業した場合の給付や、雇用の継続、再就職の援助などにより労働者の生活の安定を目的とした日本の公的保険制度です。
この雇用保険の被保険者は、健康保険や厚生年金保険と同様に保険料を支払わなければなりません。
ただし、健康保険料や厚生年金保険料は被保険者と事業主が折半で支払いますが、雇用保険料は被保険者よりも事業主の方が多く支払います。
今回は、雇用保険料の給与計算について解説していきます。
雇用保険の被保険者は、雇用保険の適用事業に雇用される常用、パート・アルバイト、派遣等、名称や雇用形態を問わず以下の労働者です。
・1週間の所定労働時間が20時間以上であること
・31日以上の雇用見込みがあること
ただし、所定労働時間が短い季節的に雇用される労働者や、一部の日雇労働者など例外として被保険者とならない労働者もいます。
また、雇用保険の適用事業は、農林水産業の一部を除き、労働者を雇用していれば業種や規模などを問わずすべての事業です。
雇用保険料は、以下の計算式で算出されます。
雇用保険料=労働者に支払う賃金総額×雇用保険料率
雇用保険料は事業主と労働者の双方が負担しますが、健康保険料や厚生年金保険料と異なり事業主負担分と労働者負担分の保険料が異なります。
労働者負担分の雇用保険料率は、失業等給付・育児休業給付の保険料率のみ支払う形になります。
一方、事業主負担分の雇用保険料率は、失業等給付・育児休業給付の保険料率に加えて、雇用保険二事業の保険料率も支払わなければなりません。
その分事業主負担分の方が、労働者負担分よりも負担する保険料が大きくなるのです。
労働者負担分の雇用保険料は、毎月の給与や賞与から支払われます。
また、雇用保険料率は、一般の事業、農林水産・清酒製造の事業、建設の事業ごとに異なるのが特徴です。
令和6年度分(令和6年4月1日から令和7年3月31日まで)の雇用保険料率は、以下になります。
①労働者負担分(失業等給付・育児休業給付の保険料率) | ②事業主負担分(失業等給付・育児休業給付の保険料率) | ③事業主負担分(雇用保険二事業の保険料率) | ④事業主負担分合計の雇用保険料率(②+③) | ⑤労働者負担分、事業主負担分合計の雇用保険料率(①+④) | |
一般の事業 | 6/1,000 | 6/1,000 | 3.5/1,000 | 9.5/1,000 | 15.5/1,000 |
農林水産・清酒製造の事業 | 7/1,000 | 7/1,000 | 3.5/1,000 | 10.5/1,000 | 17.5/1,000 |
建設の事業 | 7/1,000 | 7/1,000 | 4.5/1,000 | 11.5/1,000 | 18.5/1,000 |
令和6年度の雇用保険料率は、令和5年度(令和5年4月1日から令和6年3月31日まで)と同率です。
雇用保険料の算出に使用する賃金総額は給与の総額で、基本給だけでなく諸手当なども含まれます。
雇用保険料の計算に含まれる代表的な賃金は、以下の賃金です。
・基本賃金
・賞与
・通勤手当
・現物給与の定期券、回数券
・超過勤務手当
・深夜手当
・扶養手当、子供手当、家族手当などの労働者本人以外に支払う手当
・在宅勤務手当
・技能手当、特殊作業手当、教育手当
・配置転換や初任給などの調整手当
・地域手当
・家賃補助のための住宅手当
・精勤手当、皆勤手当などの奨励手当
・家計補助の目的で支払う物価手当、生活保証金など
・労働基準法第26条に基づき事業主の責に帰すべき理由による休業手当
・宿直・日直手当
・労働者負担分を事業主が負担する雇用保険料、社会保険料
・昇給差額
・前払い退職金
一般の事業に勤務している毎月の給与が40万円、1回の賞与が80万円の会社員を例に、令和6年度の雇用保険料の計算をしてみます。
この会社員の雇用保険料率は、6 /1,000です。
40万円×6 /1,000=2,400円
この会社員は、毎月の給与ごとに2,400円の雇用保険料が控除されます。
80万円×6 /1,000=4,800円
この会社員は、賞与時に4,800円の雇用保険料が控除されます。
労働者の給与計算において、雇用保険料も控除をしなければなりません。
雇用保険料の算出は、健康保険料や厚生年金保険料と異なり標準報酬月額を基に算出するわけではないので注意が必要です。
給与計算の控除について、疑問点がございましたら是非一度当事務所にご相談ください。