従業員が退職する場合の社会保険料、雇用保険料、税金の控除について
記事作成日:2024/8/19
給与計算を行う場合、基本的には給与から健康保険料や厚生年金保険料の社会保険料、雇用保険料、所得税、住民税などを控除します。
従業員が退職する場合には、退職日がすべて月末なわけではなく月中に退職する場合もあります。
また、退職月も従業員によってそれぞれです。
従業員が退職する場合には、社会保険料、雇用保険料、税金などの給与からの控除にどのような影響を与えるのでしょうか。
今回は、従業員が退職する場合の社会保険料、雇用保険料、税金の控除について解説していきます。
健康保険料、厚生年金保険料の社会保険料は、被保険者資格を取得した日が属する月から、被保険者資格を喪失した日(退職日の翌日)が属する月の前月分まで発生します。
すなわち、退職日が月中の場合は、被保険者資格を喪失した日が当月になりますので、被保険者資格を取得した日が属する月から、退職日が属する月の前月分まで社会保険料が発生するということです。
一方、退職日が月末の場合は、被保険者資格を喪失した日が翌月の1日になりますので、被保険者資格を取得した日が属する月から、退職日が属する月の分まで社会保険料が発生します。
社会保険料の控除は、前月分の社会保険料を従業員の毎月の給与から控除するのが一般的です。
そのため、退職日が月中の場合は、退職日が属する月の給与で、退職月の前月分の社会保険料を控除します。
一方、退職日が月末の場合は、退職日が属する月の給与で、退職月の前月分と退職月の2か月分の社会保険料を控除することになります。
退職日が月中か月末かで社会保険料の控除が異なりますので、注意が必要です。
雇用保険料を控除するタイミングは、被保険者に給与を支払う時です。
そのため、退職日が月中であっても月末であっても、退職月の給与から雇用保険料を控除します。
源泉所得税は、退職日が月中であっても月末であっても、退職月の給与から毎月の給与と同様に控除して問題ありません。
ただし、2024年は定額減税が関係する場合がありますので、注意が必要です。
住民税を給与計算で従業員の給与から控除するのは、企業などが従業員の代理として納付する特別徴収のケースです。
住民税は、前年の1年間の所得に対して課税され、翌年6月から翌々年5月までの給与から控除されます。
退職する場合の住民税の控除は、1月1日〜5月31日の間の退職と、6月1日〜12月31の間の退職とは異なりますので注意が必要です。
1月1日〜5月31日の間に退職する場合は、5月分までの住民税の残額を退職月の給与から一括控除します。
住民税の残額が退職月の給与よりも多く、控除しきれなかった住民税は、従業員が自ら納付する普通徴収により納付しなければなりません。
6月1日〜12月31の間に退職する場合は、原則退職月の前月分までの住民税を給与から控除して、退職月から翌年5月までの住民税の残額は以下のどちらかを選択して納付します。
・従業員が普通徴収として自分で納付する
・転職先の企業などの給与から天引きで納付する
また、従業員から申し出があれば、翌年5月までの住民税の残額を退職金などから一括納付することも可能です。
2024年は定額減税が関係する場合がありますので、注意が必要です。
このように、従業員が退職する場合の社会保険料、雇用保険料、税金の控除については、通常の給与計算時と異なる場合がありますので注意が必要です。
給与計算について疑問点などございましたら、是非一度当事務所にご相談ください。