年収106万円の壁の撤廃について
記事作成日:2024/12/2
厚生労働省は、パートやアルバイトなどで働く方々の厚生年金保険や健康保険の加入要件の見直し案を正式に発表しています
そのため、今後は「106万円の壁」の撤廃に向けて進んでいくことになります。
106万円の壁が撤廃されれば、自動的に130 万円の壁も撤廃されるのです。
今回は、106万円の壁が撤廃されることにより、社会保険に加入しなければならない方、加入しなくてよい方について解説していきます。
社会保険の加入要件は、厚生年金保険や健康保険の適用事業所に勤務する常用的な労働者や、1週間の所定労働時間および1か月の所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上の短時間労働者です。
この条件を満たせば、正社員やパート、アルバイトなどの雇用形態は問いません。
また、4分の3未満のパートやアルバイトなどの短時間労働者であったとしても、以下の要件をすべて満たした場合には社会保険の加入要件を満たし、厚生年金保険や健康保険の被保険者になります。
・ 勤務先の従業員数(厚生年金保険の被保険者数)が51人以上であること
・ 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満(週の所定労働時間が30時間以上は通常労働者の4分の3以上のため社会保険の被保険者)であること
・ 2か月を超えて雇用される見込みがあること
・ 学生ではないこと(休学中の学生や夜間学生は社会保険の加入対象)
・ 所定内賃金が月額8万8,000円以上であること(通勤手当・残業代・賞与等を除く)
年収106万円の壁とは、この中の月額8万8,000円を年収とすると約106万円になるためです。
家族の社会保険の扶養に入っている方は、自分で厚生年金保険料や健康保険料の社会保険料を支払う必要はありません。
さらに、国民年金の第2号被保険者の配偶者である国民年金の第3号被保険者であれば、自分で国民年金保険料を支払う必要もありません。
しかし、その方が通勤手当なども含めて年収130万円(60歳以上の方や障がい者の場合は180万円以上)を超えた場合には、家族の扶養から外れて自分で国民健康保険や勤務先の社会保険に加入することになります。
この扶養されている家族が社会保険の扶養からはずれる基準の収入が130万円のため、「130万円の壁」と呼ばれています。
働き方が多様化している現代では、厚生年金保険への加入者を広げ多くの人が将来の年金額を増やす必要があります。
そのため、厚生労働省は、パートやアルバイトなど短時間労働者の社会保険の加入要件の見直しを提案しました。
その案によると、現在51人以上としている勤務先の企業規模要件の撤廃のほか、年収106万円以上の要件に関しても、昨今の最低賃金の引上げに伴い賃金要件の撤廃案を示したのです。
ただし、週の所定労働時間数が20時間以上の要件は撤廃されないため、週の所定労働時間数が20時間未満であれば社会保険への加入は必要ありません。
また、現在社会保険の適用事業所になる対象から外れている5人以上の従業員がいる一定の業種の個人事業所も、全業種で加入対象とするように提案しています。
厚生労働省は、来年の通常国会に年収106万円の壁の撤廃についての制度改正を盛り込んだ年金改革関連法案を提出することを目指しています。
今話題となっている年収103万円の壁の見直しは、控除額を増やすことにより支払う税金額が減り、手取り収入が増える政策です。
一方、年収106万円の壁の撤廃は、厚生年金保険、健康保険の加入者を増やすことにより従業員の将来の年金額は増えますが、社会保険料を支払う人が増えることになります。
いつから始まるかなど詳細は決まってはいませんが年収106万円の壁の撤廃は、手取りを増やす政策とは逆の政策でもありますので、従業員からの質問や苦情なども多くなるかもしれません。
年収の壁について質問などがある場合や、詳しく知りたい場合には、是非一度当事務所にご相談ください。