高年齢雇用継続給付の縮小について
記事作成日:2024/12/16
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の改正により、2025年4月から高年齢雇用継続給付が縮小されます。
2025年4月以降に新たに60歳になる方は、高年齢雇用継続給付の給付率が今までの最高で15%から10%に縮小されるのです。
これまでは、従業員が60歳になって再雇用により給与を引き下げる場合に、高年齢雇用継続給付を利用すれば減額分の補填がある程度賄えました。
しかし、高年齢雇用継続給付の給付率が縮小することで、会社側も再雇用により給与を引き下げ額を考慮し直さなければならなくなるかもしれません。
今回は、2025年4月からの高年齢雇用継続給付の縮小について解説していきます。
高年齢雇用継続給付とは、働く意欲や能力がある高年齢者が60歳から65歳までの雇用の継続を援助や促進することを目的に創設された雇用保険の給付です。
高年齢雇用継続給付には、基本手当を受給していない方に対する「高年齢雇用継続基本給付金」と、基本手当を受給して60歳以降に再就職した方に対する「高年齢再就職給付金」の2種類があります。
高年齢雇用継続給付は、雇用保険の被保険者期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の被保険者が、原則60歳時点よりも賃金が75%未満に低下した場合に、最大で賃金額の15%の給付金が支給されるものです。
2025年4月から高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の改正により、高年齢雇用継続給付が以下のように縮小されます。
高年齢雇用継続給付金の受給資格を満たし2025年4月以降に60歳に達した方が、高年齢雇用継続給付金の支給を受ける場合には、支給額は最大で賃金額の10%に縮小されます。
改正のポイントは、2025年4月以降に60歳に達した方が高年齢雇用継続給付の縮小の対象となり、現在高年齢雇用継続給付を受給している方の支給率は変わらないということです。
高年齢雇用継続給付の支給額は、改正前と改正後では以下のように変更になります。
60歳時点の賃金との低下率が75%以上の場合は、高年齢雇用継続給付は支給されません。
60歳時点の賃金との低下率が61%超75%未満の場合の高年齢雇用継続給付は、実際に支払われた賃金額×支給率(15%未満)です。
60歳時点の賃金との低下率が61%以下の場合の高年齢雇用継続給付は、実際に支払われた賃金額×15%です。
60歳時点の賃金との低下率が75%以上の場合は、高年齢雇用継続給付は支給されません。
60歳時点の賃金との低下率が64%超75%未満の場合の高年齢雇用継続給付は、実際に支払われた賃金額×支給率(10%未満)です。
60歳時点の賃金との低下率が64%以下の場合の高年齢雇用継続給付は、実際に支払われた賃金額×10%です。
例えば、60歳時点の賃金月額が50万円の方が60歳以後の賃金が30万円に減った場合には、この方の60歳時点の賃金との低下率は60%になります。
このケースでの、改正前、改正後の高年齢雇用継続給付金の支給額は以下になります。
改正前は、30万円×15%=4万5,000円です。
改正後は、30万円×10%=3万円です。
このケースでは、改正前から高年齢雇用継続給付金を受給している方と、改正後から受給する方との差額は1万5,000円になります。
介護保険は、40歳〜64歳のすべての方が介護保険の第2号被保険者となり、介護保険料は健康保険の一部として一緒に支払われます。
従業員が65歳になった場合には、市区町村が運営する介護保険の第1号被保険者となるため、会社は介護保険料を給与から天引きをする必要がなくなります。
高年齢雇用継続給付金は、今回の改正に限らずに段階的に縮小されていて将来的には廃止になっていくと考えられます。
会社にとって定年延長や再雇用制度の変更など、高齢者雇用について色々と考えなければならなくなるでしょう。
高齢者雇用などについて疑問などがある場合には、是非一度当事務所にご相談ください。