産後パパ育休のメリット・デメリットについて
記事作成日:2023/7/31
2022年10月に施行された「産後パパ育休」。
どんな制度なのか?手続きはどうしたらいいのか?については、過去こちらの記事で紹介しましたが、
今回は「産後パパ育休」のメリット・デメリットについて解説します。
1)対象期間・取得可能期間
子の出生後〜8週間以内に4週間まで取得可能。
2)申し出期間
原則休業開始日の2週間まで。
3)分割取得
2回までの分割取得が可能(事前に申し出)。
4)休業中の就業
労働者の意に反しないよう労使協定を締結している場合に限り、労働者と事業主が合意した範囲内で、事前に調整した上で休業中に就業することが可能
産後パパ育休は、今までの育児休業とは別に新たに創設された制度で、通常の育休と併用すれば、子どもが1歳になるまでに最大4回(産後パパ育休分を2回、通常の育休分を2回)、休むことが可能となりました。これにより、仕事の状況や家庭の状況に応じて育児休業の取り方の選択肢を増やし、男性の育児休業取得率UPが期待されています。
1)業務の標準化・効率化がすすむ
男性従業員が育休取得をしやすい環境を整えるために、「担当者しかわからない」「業務プロセスが定まっていない」という業務が、誰でもできるよう標準化・効率化されていきます。
2)従業員のキャリア開発につながる
子育て時間や終業後のプライベートな時間を確保するため、休業中の従業員のフォローのため、業務効率を上げて生産性を保つことが重視される企業風土が作られていきます。一人ひとりの働き方や意識の変化が、企業の生産性を上げ、個人のキャリア形成にもプラスの影響を与えると考えられます。
3)助成金による金銭的な援助
男性従業員が育児休業を取得しやすい雇用環境整備や業務体制整備を行い、子の出生後8週間以内に開始する連続5日以上の育児休業を取得した男性労従業員が生じると、20万円の助成金を事業主が受け取ることができます。(※令和4年度「両立支援等助成金(出生時両立支援コース)」)
4)企業イメージのUP
最近では若手男性の間では育休取得の意向が年々高まっていると言われており、男性育休取得率が高い企業=ライスステージに応じた働きやすい企業であるというアピールポイントは、若手人材の確保にプラスに働きます。
1)業務負担に対する取得者以外の不満
男性育休がまだ十分に浸透していない企業では、子どもがいない従業員が不公平だと感じたり、育児休業期間中の周囲の従業員への業務負担に対する不満が出てきたりする可能性があります。男性育休の制度を整備するのと併せて、人材の確保やフォロー体制の構築なども欠かせません。
2)制度運用までの負担が大きい
男性育休の制度や仕組みを整えても、従業員への周知や職場内の理解、休業中のフォロー体制といった企業風土が出来上がるまでに時間がかかり、運用が軌道に載るまでの負担が大きいと感じるかもしれません。
1)子どもと過ごす時間が増えることへの喜び
出生後に育児に参加することで、子どもと過ごす時間が増え、子どもの成長を感じたり、子育ての喜びや大変さを享受できたりします。また、産後8週間までの妻が大変な時期を夫がサポートすることができるのは両者にとってメリットと言えるでしょう。
2)妻のキャリア形成への影響
夫が育児に参加することで妻の家事・育児負担が減り、妻が復職を早めることができます。また、育児休業を交代で取ることで、長期休業によるブランクを最小限にとどめることができます。
3)生産性の向上
育児休業を長く取れる組織ほど、男性従業員の帰属意識や仕事へのモチベーションが高まるというデータも出ています。(※参考資料:厚生労働省「仕事と育児の両立に関する実態把握のための調査研究事業」)
また、職場復帰した後も育児参加の時間を確保するために業務を効率化し、生産性の向上につながっていくでしょう。
1)ハラスメントの懸念
育休取得により他の従業員の業務量が増えることで、職場の上司や同僚からのパタハラ(パタニティー・ハラスメント)を受ける可能性があります。いかなる場合でもハラスメントは許されるものではなく、ハラスメントの禁止を就業規則等にしっかりと規定しておく必要があります。
2)収入の減少
育児休業中は無給となることが一般的なため、家計全体の収入が減ってしまいます。ただし、一定要件を満たしていれば雇用保険から(出生児)育児休業給付金を受け取れたり、社会保険料が免除になる制度があります。
参考:https://www.trust-works.co.jp/info/article/2302-2.html
3)育児休業後の出世への不安
育休取得による業務参加への遅れや出世への影響等の不安を感じることもあるかもしれません。育休取得が、男性従業員にとって出世の足枷とならないような企業風土づくりが欠かせません。
日本の男性育児休業取得率は低いものの、2019年にユニセフが発表した「先進国における家族にやさしい政策ランキング」では、父親の育児休業制度の充実は世界1位とされました。
今後は企業に対して、男性の育児参加を促し、育休を取得しやすい環境の整備等が求められてくることが予想されます。
出生児育児休業・育児休業ともに取得に関しては細かなルールがあり、社内規定の整備などの準備も必要となります。男性育休が発生しそうな時は、まず当事務所にご相談ください。